子犬テンプルちゃんの超初期の問題(3) 落ち着けない、眠らない

サークルの中で大運動会

テンプルちゃんが、先代犬DDちゃんと決定的に違ったのは、その落ち着きの度合いです。テンプルちゃんは常にハイパー状態です。自分からクレートに入ることはまずありません。一度無理やり入れてみたら、箱を噛んで引っ掻いてと大暴れです。あまりにうるさいので、すぐに出してしまいました。それ以来クレートに入れるのは諦め気味でした。

テンプルちゃんは疲れ知らずで、常に動き回り、噛みまわり、そして吠え周ります。うとうとして眠ったのを見たことがありません。

私以外の家族から見捨てられたこともあり、テンプルちゃんは私に対する依存度が高く、少しでも姿が見えなくなると大変な声で鳴いたり、暴れたりします。こういうのを「分離不安障害」というのでしょうか? そんなとき、家族から「静かにさせろ!」と苦情が飛んできます(「最初にテンプルちゃんを見つけてきたのはあなたでしょ」と苦情も言いたくなります)。大変なストレスです。

先代のDDちゃんは、一人になってもマイペースでした。サークルから脱走の準備をするべくゴソゴソとやったりはしますが、そのうち疲れてスースー寝てしまいました。寂しくてキャンキャン鳴いたりすることもありませんでした。

分離障害なのか?

「個性の違い」という一言で片付けられるような違いなのか、それとも「分離不安障害」とか「多動症」といった精神疾患なのか、素人にはわかりません。一度、人間の病気で医者にかかったとき、専門外だとは思いましたが先生に聞いてみたことがあります。すると(人間の医者は)「人間の子供の多動症によく似ている症状だね」とコメントしました。もちろん「専門外ですから参考程度と思って」とも言われました。

獣医で精神科という方は日本に数える程しかいません。少なくとも、近所には住んでいませんし、また、そういう方がいたとしても、言葉ができない犬の精神をどれだけ正確に理解できるのか、私にはわかりません(つまりどれだけその獣医さんを信用できるのかわかりません)。そこで、人間の多動症の原因について色々と調べてみることにしました。すると、心配、不安、恐れなどが引き金になっている場合があることがわかりました。

また、犬の飼い方、といった題名の書籍を購入してみると「分離不安障害」についての説明が結構書いてあります。ネットで検索してもたくさんヒットします。子犬のときに、「かわいい、かわいい」ということで飼い主があまりにも子犬にベタベタしてしまうと、その後、少しでも飼い主から離れただけで飼い主を呼び寄せるように吠え始めるようになる、などと書いてあります。これも不安や心配が根っこにありそうです。

犬が多動症や分離不安障害に似たような症状が「発症」した場合、それは飼い主が「急な変化」を子犬に突きつけた場合にトラウマのような形で始まっていることが(次第に)見えてきました。つまり、一人でいても平気だったDDちゃんの場合は、(無意識のうちに)少しずつ一人の状態に慣れさせるような環境だったのでしょう。一方、テンプルちゃんは、急に長い間一人にさせられた経験があり、それがトラウマとなって問題が長引いてしまったのかもしれません。

子犬を分離不安障害にしないためには、少しずつ一人でいる時間を長くするトレーニングを行うのがよいようです。しかし、そんなことは知らずに日常生活を送ってしまうのが私たち素人です。病院に行ったり、買い物にいったりしなくてはならず、そのとき犬は急に一人にならざるを得ません。ただ、いきなり30分の留守番をさせるのではなく、1分、5分、10分と少しずつ慣らせていく必要があるのでしょう。しかし、素人の私たちは、いきなり60分とか留守番をさせてしまい、その後「分離不安」に似た症状を見せるようになったテンプルちゃんの問題行動に悩まされることになるのです。

夜のキャンキャン鳴きの問題

家族に嫌われてしまったテンプルちゃんは、家族の寝室から離れた部屋に一人で寝ることになっていました。すると、夜中にキャンキャン、ワンワン吠えました。大きな声で叱ると黙るのですが、しばらくすると同じ状態に戻ってしまいます。深夜も断続的に鳴き続けます。長いときは1時間近く鳴いていました。5分ほどは(多分疲れて)黙っているのですが、また吠え始めます。家族も私もうんざり。そして寝不足。毎日ひどい疲労に悩まされました。テンプルちゃんにしてみれば、不安と心配の極致だったことでしょう。

ほとほと困り果てた私たちは、ふたたび元警察犬訓練士のトレーナーに(お金を払って)相談することにしました。すると「一発でうまく行く」よい方法がある、と言います。さっそくその夜、その方法を試してみることにしました。

この方法は「天啓法」といいます。神話や物語などに、人間が悪事を行うと雷や地震など神の天罰が下る話がよくありますが、それによく似ています。聖書のモーゼのエジプト脱出では海底地震による海水面の異常低下とその後の大津波、ソドムとゴモラは火で焼かれたと言いますがおそらくは「大きな隕石」のようなもの、ノアの箱舟は大洪水、雷に打たれるのはフランケンシュタインだったでしょうか?

要は、鳴き始めるや否や、犬が驚くようなことを発生させて黙らせるのです。このとき、人間の存在を感づかれてはなりません。姿を隠し、気配を消して暗闇に潜み(あるいは離れた部屋に隠れ)、その瞬間を待ちます。そして犬が鳴き始めるや否や、バシッと驚くべき天罰を発生させるのです。花火のような音や、雷のような光、とにかく色々と考えて、犬が驚くようなことをやるのです(私たちは扉をバタンと閉めてみたり、火薬で大きな音がするおもちゃのピストルを利用したりしました。ただ、後者は市街地では誤解を避けるため使用しないほうがいいですね.....)。

最初に天啓法を試した時は、その威力に驚いてしまいました。沈黙し、朝までぐっすりです!しかし、ひと月もすると、また夜泣きが始まってしまいました。トレーナーに相談すると、繰り返し実施しないと定着しない犬もたまにはいる、といいました。少しがっかりしましたが、その晩再び天啓法を試しました。そしてまた静かになりました。

こんなことを1ヶ月おきくらいに繰り返しているうちに、テンプルちゃんの夜泣きは無くなっていきました。1歳を過ぎる頃には「皆無」となったと言えると思います。ただ、朝になってお腹が減ったりすると今でもなく場合があります。しかし、その鳴き方は執拗な長吠えではなく、無視していればすぐに鳴き止む程度です。

クレートトレーニングの必要性

分離不安障害は、頼りにしている飼い主がいなくなることに対する不安から発生します。そこで、「犬が一人でも安心して入れる場所を確保するように」と色々な本に書いてあります。それが「クレート」です。

しかし、テンプルちゃんはクレートに閉じ込められて嫌な経験をしたことがあります。また、分離不安もクレートに閉じ込められて発症したのではないかと疑う素地があります。実際に、教科書通りにクレートに入れてみたりもしましたが、噛んだり鳴いたりして激しく抵抗しました。スパルタ方式で無理にやるべきか、それとも「優しく」ゆっくりやるべきか、大変迷いましたが、両者ともにうまくいかない場合が多いらしいです。テンプルちゃんもダメでした(というより、トラウマになる可能性があるので前者は避けるべきだし、後者は舐められてしまい「負の教育効果」となる恐れがあるのでやはりやってはいけないようです)。

クレートは静かにしたり、お留守番のために必要なだけでなく、車での移動や災害時における飼育場所としても重要です。クレートトレーニングは飼い犬にとって必須なものであると、様々なブリーダーやトレーナーから注意されました。

嫌がるテンプルちゃんをどうやったらクレートに入れることができるのでしょう?先代犬のDDちゃんは、(何も教えてないのに)自分からドサっとクレートに入って、よくグウグウ居眠りをしておりました。テンプルちゃんには、あの状態が夢のまた夢のように思えます。

まず参考にしたのが、ローヤルカナンのHPです。

www.royalcanin.comこの文書を参考にして、まずはサークルの中にクレートを入れるだけにしてみました。入り口は開けたままにしておきます。最初の夜は、ガジガジと齧っておりました。テンプルちゃんの鋸歯にかかっては流石のアメリカ製クレートも崩壊寸前です.....。「だめ」と注意はしてみましたが、こちらの意識が途切れるとすぐにかじり出します。多少のダメージは諦め、できる限り噛みつきをやめさせながら、一晩、クレートと共に「暮らして」もらいました。朝になったら、クレートをサークルから取り出します(ストレスをかけすぎないため)。新品のクレートが、もはやボロボロ状態です。がっくり落胆しました。

次の日の晩も、同じようにクレートを入れるだけとしました。すると、さっそく変化が現れました。自分からクレートに入ってみたのです(初めて!)。とても嬉しかったです。ただ、数秒で出てきしまいました。放っておきましたが、再びクレートをかじり出しました。落胆...。注意してかじりをやめさせ、またかじられ、と前の晩の繰り返しです。ところが、大好きなカミカミおもちゃをクレートに放り込んだとき、劇的なことが起きました。クレートの中に入って、おもちゃを噛みながらくつろぎ始めたのです!

これがきっかけで、クレートに対する恐怖心が無くなったようでした。DDちゃんのように自分から入ることはありませんでしたが、夜になって「さあ、おやすみだよ」といってクレートの中に引き入れても、暴れたり吠えたりしなくなりました。そして、閉じ込められたクレートの中でスヤスヤと眠り出したのでした。

強制的に閉じ込めなくてはなりませんが、一旦クレートに入ると眠ることができるようになったのです。もちろん、すぐに寝るわけではなく、しばらくはガソゴソやって、あちこち噛んでから、知らないうちに寝ている、という感じです。

特に、扉を閉め、明かりを消して真っ暗にすると、クレートの中でも快適に眠ってくれるようになりました。

これで自動車での移動や、お客さんが来た時の犬の居場所の確保、さらには病院や買い物のときのお留守番など、様々な可能性が生まれたのです。本当に嬉しく思いました。

家の中で犬を飼っている人は、クレートトレーニングに対して負の感情を持つ人が多いと思います。つまり、「自由に行動させないとはけしからん。犬を閉じ込めて飼って、なんの意味があるのだ。家族のようにふれあいたいから飼っているのではないか?」という否定的な意見です。実は私の家族もこう言ってクレートトレーニングを否定しました。

困ってしまった私は、その頃、朝日新聞で連載記事になっていた、UG中目黒というドッグトレーニング店の高橋さんのブログに目が止まりました。「クレートトレーニングは必須」というその説明に感動し、それを家族に見せて納得してもらいました。

www.ugpet.com

クレートに自分からは入らないテンプルちゃん

先代犬のDDちゃんは、自分からクレートに潜り込んで、ぐっすり寝る習慣が自然とできました。ですから、クレートの蓋を閉めて閉じ込める必要はまったくありませんでした。好きな時に入って、好きな時に出ていました。

ところがテンプルちゃんは、自らクレートに入ることはまずしません。こちらで引っ張っていくか、餌で釣るかしないと入りません。入ったらすぐに蓋を閉めて閉じ込めます。さもないとすぐに脱走してしまいます。しかし、一度クレートに閉じ込められるとそれなりに眠ってくれます(深夜にキャンキャン鳴き出すまでは....)。

なんとか自分から入ってくれないものか、と悩んでいましたが、UG中目黒の店長に相談すると「1歳を超えたら自然に自分から入るようになるだろう」と言われ、少し安心しておりました。

ところが、1歳を超えてもまったく変化なしです。クレートには餌などでつられて入りますが、自分から入ることは全くありませんでした。天啓法の繰り返しにより、夜中の鳴き声は全くなくなりましたので、クレートの中に入ると、ある程度は「快適」に感じているようです。

クレートがダメでも、座布団だったり、犬用ソファだったり、そういった「お気に入りの場所」ができてくれたら安心なのですが、テンプルちゃんにはそういう場所はまったくありません。犬用ソファは食いちぎり、中のスポンジが出てきてしまうような状態。座布団は引っ掻いて引っ掻いて....その結果、座布団は引きずられて場所が移動し、部屋の隅に変な形で盛り上がっています....。

テンプルちゃんは眠るということに興味がないので、なにか遊ぶものを常に探し回っています。さもなくば、家や家具をかじったり引っ掻いたりします。家族は見張りのために緊張状態となり、ほとほと疲れて怒鳴り出したりします。

「やることがない」という状態は犬にとってはとても良くない状態だそうです。命令を聞いたり、一緒に遊んだりなど、人間と共同作業をすることに喜びを感じるようです。ですから、一人遊びというのも本来はよくないそうです(特にボーダーコリーは、人間と一緒に作業し、人間のために働くように選ばれた犬です)。人間が構ってやれない場合は、ぐっすり寝てもらう方が精神的にも肉体的にもよいらしく、ここでクレートが役に立つわけです。ですから、無理強いとは考えず、ボーダーコリーの生育のためと割り切ってクレートに入れるのがよいらしいのです。

ところが、先日、なんと初めて自分からクレートに入ったのです!生後1歳3ヶ月ほどでしょうか?しかし、入室時間はわずか10秒程度。その後、似たようなことを3回ほどやりましたが、いまのところDDちゃんのように自由に出入りするような状況にはなっていません。とにかく辛抱ですね。