部屋をウロウロするボーダーコリーへの対処法

1歳を超えても落ち着かないテンプルちゃん

テンプルちゃんは落ち着きがない、とこれまで何度も書いてきました。夕食の後、家族がテレビを見ながら団欒していると、その周りをウロウロと歩き回ったり、尻尾を追いかけてグルグル回転します。「落ち着け!」と家族の誰かが怒鳴って座らせても、30秒もするとまたウロウロぐるぐるの再開となります...。この癖は幼少パピー期の頃からずっと続いていて、1歳を超えた今でも毎日これの繰り返しです。

ご飯を食べると眠気が襲ってきて、静かにクレートに潜り込んで眠りこけていた先代のDDちゃんとはえらい違いです。

しかしながら、先日ふと、この問題を解決するいいアイデアを思いついたのでした(といってもその内容はありふれたものですが)。

常同行動

テンプルちゃんが1歳に近づいてきた頃、後足の踵...(私はこれを膝だと思っていましたが、獣医の先生に「犬の足はここまで続いているんだよ」と訂正されたのでした....)をガリガリ自傷するような形で噛み続ける悪癖を発症しました。毛が抜けて、血がいつも滲んでいるような状態です。治ってくると痒くなるのか、また噛んでしまいます。こうして傷はいつまでもカサブタと血の滲みの状態を行ったり来たりで、なかなか治りません。獣医の先生は「常同行動の軽いやつだろう」と診断しました。「重篤ではないが、治るまでが厄介」とのことでしたが、それは外傷としての見立てであって精神的な疾患としての診断ではないように思えました。おそらく「精神疾患」としてはこの行動はかなり深刻なものだったのかもしれません。

しかし、いろいろあって京都のブリーダーのところにテンプルちゃんを10日ほど預けたときに、この悪癖は治りました。周りに犬が複数いるという環境の変化やブリーダーの厳しいしつけによって常同行動が少し緩和したのではないかと思っています。ひと月ほど悩んでいた足の傷はすっかり良くなりました。

これで「常同行動とはおさらば」と思ったのですが、最近、あの頃に読んだネットの記事が急に頭に浮かび上がりました。読んだ当初は読み飛ばしていたのかもしれませんが、なんとなく頭に残っていて、それが突然閃いたのです。

「あっ!食後のウロウロや尻尾を追い駆けてぐるぐる、それに暇な時に落ち着きなく歩き回るのは「常同行動」の現れだ!自傷行為だけが常同行動ではなかったのかも。」

そこで再度調べ直してみることにしました。wikipediaで見たような記憶があったのですが、いま読み返してみると動物に対する説明はあまり詳しく書いてありませんでした。別のなにかの記事のようだったらしいですが、なかなか見つかりません。

しかたなく、記憶にぼんやり残っている記事を探すのはやめて、頭にかすかに残っている「動物園のしろくま」というキーワードを使って再調査することにしました。するとものすごい数の記事がヒットして驚きました。

しろくまの常同行動

常同行動が特に有名なのが動物園のしろくまのようです。調査を続けると、しろくまに限らず、動物園で飼育されている野生生物の多くがどうやら常同障害を発症しているようです。

私はその昔、上野動物園で見たシロクマがウロウロ歩き回っていたのを記憶していますが、見ていてとても気の毒でした。まさか自分が今飼っている犬があのしろくま君と同じ心の病を発症していたとは、夢にも思いませんでした。しかし、記事や論文を読み進めてみると、「同じもの」であることが確信できました。

たとえば、熊本の動物園のブログ記事に、しろくまの常同行動を軽減させるために考案した方法と実験についての記述がありました。

www.ezooko.jp

調べてみると、多くの動物園で、この実験と同様のことを試しているようです。キーワードは「環境エンリッチメント」です。なるべく自然に近い状態を動物園で再現し、変化に富む多様性のある住環境を与える手法です。

興味深いことに、水族館の魚たちにも常同行動の問題が発生しているようです(まだ広く認知されてはいないようですが)。安定で安心な、しかしいつも全く同じ住環境(水槽)は、魚たちには実はかなり酷な環境だというのです。

keepersnavi.com

ちばてつや「あしたのジョー」のセリフを思い出してしまいます。ジョーがぬくぬくとコタツに当たってみかんの皮を剥きながら幸せな老後を過ごしている風景は、ちょっと想像つきません...。また、松本零士の「銀河鉄道999」の「永遠の命をもつ機械化人間」の意味についても、常同行動と似たような感じがします。

ボーダーコリーやシロクマたちは、危険だらけであっても、スリルに満ちた現実の世界を、その短い生涯をかけて精一杯生きていきたいのだと考えるようになりました。

ちなみに英語では常同行動を「stereotypic behaviour」と表すそうです(リンク先の論文の解説はこちら)。

www.enrichment-jp.org

ではどうするか?

さて原因がわかったところで、どのような手を打つべきなのでしょうか?銀河鉄道999星野鉄郎や、あしたのジョー矢吹丈たちの言葉が参考になるのは間違い無いでしょう。短い人生を力一杯生き抜くために、時には危険なことに立ち向かいながらも困難にチャレンジして切り抜けるような生活を提供するのです。いわばスリル満点の人生というべきでしょうか?

そこでまずは散歩の回数と質を上げてみることにしました(笑)。散歩の回数が少ないとテンプルちゃんは次第に生活に飽きてくるのがわかります。そのタイミングで尻尾追いなどが始まるように思えます。そこで常同行動が始まる前に、短くてもよいから、刺激の多い街中散歩へ連れ出すことにしました。隣の犬に吠えられたり、塀から乗り出してベロを出して待っている仲のいいレトリーバーに挨拶したり、猫と火花を散らして「ガンのつけあい」をしたり、と様々な刺激を与えるのです。

夕方に犬連れ込みOKのお店に連れて行ってみる対策も考えています。ペット用クッキーが切れそうなので、本日は買い物をしにペットセンターへ行ってみようかと考えています。

それから、退屈してきたタイミングでボールキャッチ遊びを室内でやってみることにしました。あまり長時間はやらず、おもしろかった!と満足できる程度で止めてみて、どういう反応になるか観察してみようと思っています。(本日は庭の芝生でディスク投げを二十回ほどやりましたが、それはそれは見事なジャンプとキャッチでした。それから、近くの牧場に出かけ、木製ベンチを使ってアジリティを何度もやりました。)

ただ車でのお出かけでは、車内でせわしなくウロついてしまう傾向があるので、すこし気をつけながらやってみ流必要があります。

それから、テーマを決めて、街中のシンボル探しなどをやってみたら面白がるのではないかと考えています。これは先代犬のDDちゃんが好きだった「探検遊び」です。たとえば、私たちが住む街には議会で指定した綺麗な風景がいくつかあります。そこにいくと認定の記念碑が建っているのです。それを一緒に探し出しては写真に収めるという活動がDDちゃんは大好きでした。なにか面白いテーマが見つかったら、さっそくそれを実行してみたいと思います。

それでは、まずはペットセンターに車で買い物にいってまいります。果たして「命を目一杯感じて楽しむこと」ができるでしょうか?