子犬テンプルちゃんの超初期の問題(1) 排泄関係

テンプルちゃん(生後4ヶ月ごろ、2022年9月下旬)

落胆の子犬育て

生まれてから2ヶ月後に我が家にやってきたテンプルちゃんですが、正直「楽しい子育て」とはなりませんでした。元気すぎるテンプルちゃんは暴れるばかりで、聞き分けが悪く、こちらの意図を汲み取るということができません(初代のDDちゃんはこれが子犬の時からできたので、テンプルちゃんのいたずらぶりは衝撃でした)。

テンプルちゃんの子犬時代「超初期」における問題点について書いてみたいと思います。誰もが夢見る楽しい子犬との生活は、必ずしも期待通りにはいきません(少なくとも私たちの場合は)。きっと理想とのギャップで苦労している人は多くいるはずです。そんな人にこの記録が参考になってもらえれば幸いです。

まずは排泄関係の問題についてまとめてみます。

排泄関係の問題

色々ありましたが、今振り返ってみると幾つかのポイントにまとめられます。(1) 食糞(2) トイレシーツの食いちぎり(紙噛と命名)(3) 当てつけおもらし (4) 草や枝、ゴミなど食べた後の下痢 (5) 屋外で排泄できないこと、といった感じです。

1. 食糞の問題

子犬がどんなタイミングで大便をするのか掴むまでに数日から一週間ほどかかります。ぼーっとしていると、いつのまにウンチをして食べ散らかしていることがあり、掃除が大変でした。

懐の深い方なら耐えられるかもしれませんが、「早くきちんとした犬に躾けて、人間の家族同然の理想的な共生の暮らしをしよう」などと考えていると、なかなかこの「悪癖」が治らない場合、かなりのストレスになります。そして、この悪癖は(そのうち治るとはわかっていても)当事者とっては「永遠に治らない難題」のように見えてしまい、とても精神的に疲労します。

私たちが取った方法は、「四六時中見張る」でした。子犬の場合、深夜にウンチをすることもあるので、シベリアの森で焚き火が消えないようにして狼から身を守るように、「寝ずの番」をすることになりました。これは非常にきつい作業です。これをやると、子犬のことが憎らしくなること請け合いです。

この問題は、少しずつ、ゆっくりと無くなっていきました。消化器の成長とともにウンチの回数は少なくなり、タイミングも定期的になり、対処しやすくなります。記録を取り続けておけば、闇雲に「寝ずの番」をしなくとも何時頃にどのくらいのウンチをするか予想がつくようになるので、その時間に近づいたときだけ「寝ずの番」をすれば良いのです。短時間で済むのでストレスは減ります(なくなりはしませんが)。こんなことをやっているうちに、人間の生活リズムに合わせて(つまり起きているタイミングで)排泄をしてくれるようになり、そして回数も3、4回に減少していきます。

記録を見ると、1日に6回もやっていた頃がありました...。この時は、朝5時と朝6時半にやったとあります。寝坊すると食糞の後始末で大変な目にあいます。緊張していると眠りが浅くなって疲れが取れない日が続いてしまいます。

排泄の記録を必死に分析し、時間間隔が等間隔になったり、イレギュラーでも傾向が読み取れるようになったりして、「排泄予想理論」が完成していくにつれて子育てが多少は楽になった記憶があります。

食糞に関しては、野生動物や、猫、他の犬の糞を食べてしまう、というタイプもあります。こちらはジアルジアやコクシジウム、回虫といった寄生虫感染の問題と絡んでいるので、よりストレスがかかります。ただ、子犬「超初期」では、ワクチンの関係で、屋外に普通は出ませんので、この問題は発生しないはずです。テラちゃんも、しっかりワクチンが有効になるまで屋外に出ませんでしたので、この問題は超初期では発生していません。ただ、ワクチンのせいで社会化トレーニングが遅れると、しつけの観点から大きな問題が後々発生しますので、注意が必要です。これについては別の機会に書きたいと思います。

2. 排泄シーツ噛み(「紙噛」と命名

テンプルちゃんは、屋外で排泄しないようにブリーダーのところでしつけられていました。ベランダでもやりません。サークルの中の排泄シーツだけを目標にして排泄します。しかし、大抵の場合、シーツの「上」ではやってくれません。半分はずす程度なら「大喜び」するほど下手でして、大抵は「大外し」でした。

排泄スポットの面積の割合で、CC(センターサークル=シーツのど真ん中=大成功!)、TD(相撲の「徳俵」より=ギリギリシーツの上=成功)、QS(Quater spill = 25%シーツ外), HS(half spill=50%シーツ外), PF(Perfect failure = 100%失敗)などといった記号を編み出して記録し、一喜一憂しておりました。

しかし、テンプルちゃんは、このシーツが大嫌いなのか大好きなのかわかりませんが、暇さえあれば口に入れて噛みちぎる悪癖をもっておりました...。前もってあらかじめ敷いておくと噛みちぎってしまい、肝心な時に役立たず...ということが多々ありました。仕方ないので、排泄が間際に迫ったタイミングで、すっとセットするという「神業」が要求されたのです。もちろん、そんな神業、普通の人間にはできっこありません。早く置きすぎて破壊されるか、遅くなってしまい排泄に間に合わないかのどちらの場合がほとんどです。これも、ストレスがたまる出来事の一つでした。

そこで、なるべく早く屋外で排泄できるようにしつけようと思ったのですが、これもなかなかうまくいきませんでした。これに関しても後で書きたいと思います。

「神業」を会得するまでなんども失敗を繰り返しました。ものすごいイライラと怒りに支配される毎日でした。しかし、不思議なもので人間は「神業」がだんだんとできるようになるのです。時間が近づくと、ベランダに誘導し、あらかじめ置いておいたシーツの上に排泄できるようになってきました。風でシーツが飛ぶこともあったので、プラスチックの固定板をペットショップで買ってきて、その上にシーツを挟んで固定する方式も後で編み出しました。最終的にはこのやり方で落ち着き、私たちも神業の成功率が高くなりました。これは成長とともに排泄のタイミングが定期的になって予想しやすくなったこともあります。

あれから一年経った現在、使い残した排泄シーツが大量に残っています。あれほど脱却不可能に見えた排泄シーツからの卒業はいつの間にか起きていたのです。もちろん、それは屋外での排泄を身につけたときに始まったのですが、そこに至るまでには紆余曲折がありました。子犬「超初期」に身を置いていた頃は「夢のまた夢」のように感じられました。

3. あてつけお漏らし

おすわり、ふせ、まて、お手、など基本的な命令を教えようとしたり、排泄のやり方や、ご飯の食べ方など、子犬にはいろいろと教えたいことがあります。素直に学んで習得してくれればいいのですが、嫌なことはなかなかやってくれません。特に「ふせ」に関しては、その意味がわかっているように感じるのに、なかなかやってくれませんでした。

そこで、しつこく繰り返したり、強制してみたり、といろいろ試すわけですが、テンプルちゃんは嫌なことを強制すると、「あてつけお漏らし」をしました。おしっこのやり方はすでに覚えて上手にできるようになったのに、しつけの後に、PF(100%外し)をやったり、食糞を隠れてやったりしました。

この問題は結局自分たちでは解決できず、対立関係が続いた時期もあります。しかし、子犬に虐待に近いようなきつい罰を与えるのは絶対に避けなくてはなりません。子犬に不信感や恐怖心などといったトラウマを持たせてしまうと、後でしつけがやりにくくなり、大変になってしまうだけです。叩く、どなる、閉じ込める、強引に力ずくでやらせる、などもやってはならないと思います。

(1)餌を使って、損得勘定でしつけを行う...これはしつけの導入にすぎません。最終的にはこういう「わいろ」は無くさないといけませんので、何度も適用することはできません。犬を飼い始めた初心にしてみれば「じゃあ、どうすればいいの?」と難しく感じます。

(2)餌以外の損得勘定でしつけを行う...実は、「褒める」という行為自体もご褒美になるのだということを、英国のトレーナーのHPで知りました。最初は餌を使うが、すぐに「good boy!」と大げさに頭や耳、体をさすって褒める、というしつけ方法です。犬は餌も好きですが、褒められることも同じくらい大好きだということです(Royal CaninのHPにも書いてあった記憶があります)。このとき、少し甲高い声音で褒めるとよいようです。どうやら、犬は高い音の方がよく聞こえるらしいからです。

(3)あてつけお漏らしをしても無視 ......お漏らしをすると人間が大騒ぎ(声を上げて怒ったり、落胆の声を上げたり、大慌てで掃除を始めたり....)するのが面白くて犬は「あてつけ」をするようです。ですから、沈黙し、淡々と掃除や後始末をしてしまうと、犬は拍子抜けし、あてつけにこだわらなくなります。なかなか難しい技ですが、これも結構効果あります。

私たちは、これらの方法を完全にマスターしたとは言えませんが、真似事をやりながら、すこしずつ「あてつけお漏らし」の頻度を減らしたと思います。ただ、半年以上かかりましたので、私たちは非常に「消耗」しました....。

4. 草などを「拾い食い」した後の下痢

子犬はいろいろなものを拾い食いしてしまいます。草や枝を囓って飲み込んでしまうと、腸壁や胃壁が傷ついてしまい、消化機能が低下することがあります。特に、腸壁が痛むと水分や養分の吸収が弱くなり、食物をぎゅっと「絞る」ことなく、そのままスルスルと排泄段階まで流してしまうことになります(かかりつけの獣医さんから聞いた内容)。これが、いわゆる「下痢」です。

腸の細胞の代謝サイクルは1,2日ということですから、下痢が始まったら、腸壁が回復するまでの数日間(多くの場合は1日程度でよいらしいです)は「絶食」して腸壁を食物が擦って壊さないようにします。水は大丈夫です。

回復期になったら、柔らかくしたフードを少しずつ食べさせるなど、腸壁に食べ物が引っかかりにくいイメージで食事を再開します(たくさん食べさせると腸管が食物で詰まるイメージですから、そのようなやり方は最初避ける...といった具合)。

テンプルちゃんは、超初期には屋外に出ていなかったので、葉や枝の誤飲のようなものはありませんでしたが、絨毯やシーツを囓って飲み込んだり、手紙やティッシュペーパーを飲み込んでしまったり、といったことをやっていました。獣医さんには、のちに「葉っぱや枝は下痢の原因になる」と教わりましたが、今振り返ると、超初期の下痢は紙などを飲み込んだせいではないかと感じます。ただ、その時は「原因不明」でしたが(獣医さんも万能ではないようです)。

下痢をするたびに、ジアルジアを疑う、というのも精神的に疲れました。その度に下痢のサンプルを獣医さんにもって行って、スナップジアルジアや下痢パネルと呼ばれる総合検査を行いました。3、4回やりましたが、いつも「陰性」でその度に安堵の吐息が出ました。今考えると、屋外に行ってないのだから、ジアルジアなどに感染する可能性は少なかったのでした。

ただ、家のなかに侵入してきたゴキブリとか蜘蛛などを食べてしまった場合は、感染のリスクは多少出てきます。(テンプルちゃんは、ゴキブリ追いの癖、というか遊びをブリーダーのところで覚えてきたようで、今でも虫に飛びかかるような行動をボール追いなどの際に見ることがあります。)

5. 屋外での排泄

ワクチンが有効となり、いよいよ屋外に出る時がやってきました。テンプルちゃんは臆病でして、ベランダの階段を下り降りることができませんでした。管理する側からすれば、庭の芝生に逃げ出さないので楽といえば楽ですが、屋外での排泄を目指す上では、この臆病さは邪魔な性格でした。

階段を下り降りることができるようになっても、なかなか芝生で排泄することはできません。家の中でお漏らしをするたびに、飼い主のイライラメーターは最高値に振り切れました。

対策として最初に思いついたのは、排泄シーツを芝生に敷くというやり方です。これは一定の成功を収めました。なかなか排泄をやらずにためらっていても、排泄シーツを置いた瞬間におしっこやウンチをすることができたのです。これだと(HSやQSといった)シーツから漏れ出てしまう問題が発生してもイライラしません。少しずつ、面倒がかからなくなってきたのを実感しました。しかし、シーツ代が節約できないという問題はありますし、台風が近づいてきたりして強風が吹くとシーツが飛んでしまってイライラします。大雨の日も大変でした(基本的に水吸収シートなので、おしっこを吸う前に、雨で膨らんでしまうのです)。この期間は結構長く続きました。屋外なのに排泄シート...これでは最終的な解決になりません。

決定的な解決はお散歩でした。初めてのお散歩から2,3週後のことでした。田んぼの真ん中の農道でおしっこをしたのです。初めて敷地以外でおしっこをしました。京都などの観光地や東京の住宅街では、路上おしっこは推奨されません。むしろ屋内で排泄してから散歩に連れ出すように、といった指導をしています。しかし、犬の成長を考えると(特に大型や中型犬は)屋外での排泄も大事な活動の一つで、生活のリズムを築く上で重要です。テンプルちゃんは、この初めての屋外おしっこをきっかけに、排泄シートにこだわらなくなっていきます。もちろん、一気に解決したわけではなく、シートを見せて反応するということを繰り返しながら、次第にシートなしでもおしっこやウンチをしてしまう場合が増えて行ったのです。散歩でのおしっこも、その後なかなかできない期間が続いたりもしましたが、庭での排泄に慣れるにつれ、自然にできるようになりました。「きっかけ」があると、あとは相乗効果によって、どちらが先というわけではなく、自然に成長していくものらしいです。

ですから、飼い主の役割は「きっかけ」を与えることだと思いました。頭をひねり、様々なことを試して「きっかけ」を探すのです。きっかけがあると、子犬はそれをうまく利用して成長できるようです!

車での最後のお漏らしは、生後8、9ヶ月の頃だったと思います。犬は自分の生活範囲を綺麗にしたいという欲求があるらしく、成長するとお漏らしは自然と無くなっていきます。しかも、最終的には芝生の上でもやらなくなります。散歩やディスクで遊ぶ場所ですから、きれいにしておきたいのでしょう。1歳を超えた今では、庭の隅とか、散歩先の路上など、自分のテリトリーを汚さないようなところで排泄できるようになっています。