ペットセンターにて「命いっぱいに生きる」

ペットセンターに昨日行ってまいりました。お友達の犬たちには会うことはできませんでしたが、店員とのやりとりを交わすことはできました...。が、それは大変なものでした。

目当てのハート形クッキーを陳列棚から取り出して会計までいったところは優秀なボーダーコリーでした。ひっぱりもせず、よそ見も、商品へのパクつきもなく、それは優秀な犬に見えたことでしょう。

店員に商品を渡し精算が始まりましたが、レジの台の前に静かに座って待っています。かなりお利口に見えます。クレジットカードの暗証番号を押すところまでは、ほぼ完璧だったと思います。

しかし、領収書をもらうために店員に手を伸ばした瞬間でした。待ってましたとばかりに、テンプルちゃんは店員めがけてミサイルジャンプしたのです!

普通、レジの前にある透明なアクリル板はコロナウイルスの感染を防ぐために置いてあるはずだと思うのですが、このペットセンターのアクリル板はテンプルちゃのアタックを防ぐために設置してあるかのように見えました....。

危うくテンプルちゃんのアタックに押し倒させる恐れがあった店員ですが、アクリル板に守られ、無事に領収書を渡すことができたようです。私はというと、領収書を掴むやいなや疾風のような白黒の影が顔のすぐ横を通り過ぎるのを(うかつにも)見送ってしまったあと、ふと我に返って必死にリードをひっぱってはテンプルちゃんを台から引きずり下ろすのに懸命となりました。

引きずり降ろした後のテンプルちゃんは満足げにレジ台の前に座ってオスマシ状態です。店内も私の横を落ち着いて歩いてきました。

家に帰った後、食事の前に若干の尻尾追い(5秒を二回ほど)はありましたが、概して落ち着いており、うとうととカーテンの下で居眠りをしておりました。どうやら「命いっぱいに」ペットセンターを楽しんだようです。

次の目標は、ペットセンターで暴れることなく、「命いっぱいに生きること」です。

部屋をウロウロするボーダーコリーへの対処法

1歳を超えても落ち着かないテンプルちゃん

テンプルちゃんは落ち着きがない、とこれまで何度も書いてきました。夕食の後、家族がテレビを見ながら団欒していると、その周りをウロウロと歩き回ったり、尻尾を追いかけてグルグル回転します。「落ち着け!」と家族の誰かが怒鳴って座らせても、30秒もするとまたウロウロぐるぐるの再開となります...。この癖は幼少パピー期の頃からずっと続いていて、1歳を超えた今でも毎日これの繰り返しです。

ご飯を食べると眠気が襲ってきて、静かにクレートに潜り込んで眠りこけていた先代のDDちゃんとはえらい違いです。

しかしながら、先日ふと、この問題を解決するいいアイデアを思いついたのでした(といってもその内容はありふれたものですが)。

常同行動

テンプルちゃんが1歳に近づいてきた頃、後足の踵...(私はこれを膝だと思っていましたが、獣医の先生に「犬の足はここまで続いているんだよ」と訂正されたのでした....)をガリガリ自傷するような形で噛み続ける悪癖を発症しました。毛が抜けて、血がいつも滲んでいるような状態です。治ってくると痒くなるのか、また噛んでしまいます。こうして傷はいつまでもカサブタと血の滲みの状態を行ったり来たりで、なかなか治りません。獣医の先生は「常同行動の軽いやつだろう」と診断しました。「重篤ではないが、治るまでが厄介」とのことでしたが、それは外傷としての見立てであって精神的な疾患としての診断ではないように思えました。おそらく「精神疾患」としてはこの行動はかなり深刻なものだったのかもしれません。

しかし、いろいろあって京都のブリーダーのところにテンプルちゃんを10日ほど預けたときに、この悪癖は治りました。周りに犬が複数いるという環境の変化やブリーダーの厳しいしつけによって常同行動が少し緩和したのではないかと思っています。ひと月ほど悩んでいた足の傷はすっかり良くなりました。

これで「常同行動とはおさらば」と思ったのですが、最近、あの頃に読んだネットの記事が急に頭に浮かび上がりました。読んだ当初は読み飛ばしていたのかもしれませんが、なんとなく頭に残っていて、それが突然閃いたのです。

「あっ!食後のウロウロや尻尾を追い駆けてぐるぐる、それに暇な時に落ち着きなく歩き回るのは「常同行動」の現れだ!自傷行為だけが常同行動ではなかったのかも。」

そこで再度調べ直してみることにしました。wikipediaで見たような記憶があったのですが、いま読み返してみると動物に対する説明はあまり詳しく書いてありませんでした。別のなにかの記事のようだったらしいですが、なかなか見つかりません。

しかたなく、記憶にぼんやり残っている記事を探すのはやめて、頭にかすかに残っている「動物園のしろくま」というキーワードを使って再調査することにしました。するとものすごい数の記事がヒットして驚きました。

しろくまの常同行動

常同行動が特に有名なのが動物園のしろくまのようです。調査を続けると、しろくまに限らず、動物園で飼育されている野生生物の多くがどうやら常同障害を発症しているようです。

私はその昔、上野動物園で見たシロクマがウロウロ歩き回っていたのを記憶していますが、見ていてとても気の毒でした。まさか自分が今飼っている犬があのしろくま君と同じ心の病を発症していたとは、夢にも思いませんでした。しかし、記事や論文を読み進めてみると、「同じもの」であることが確信できました。

たとえば、熊本の動物園のブログ記事に、しろくまの常同行動を軽減させるために考案した方法と実験についての記述がありました。

www.ezooko.jp

調べてみると、多くの動物園で、この実験と同様のことを試しているようです。キーワードは「環境エンリッチメント」です。なるべく自然に近い状態を動物園で再現し、変化に富む多様性のある住環境を与える手法です。

興味深いことに、水族館の魚たちにも常同行動の問題が発生しているようです(まだ広く認知されてはいないようですが)。安定で安心な、しかしいつも全く同じ住環境(水槽)は、魚たちには実はかなり酷な環境だというのです。

keepersnavi.com

ちばてつや「あしたのジョー」のセリフを思い出してしまいます。ジョーがぬくぬくとコタツに当たってみかんの皮を剥きながら幸せな老後を過ごしている風景は、ちょっと想像つきません...。また、松本零士の「銀河鉄道999」の「永遠の命をもつ機械化人間」の意味についても、常同行動と似たような感じがします。

ボーダーコリーやシロクマたちは、危険だらけであっても、スリルに満ちた現実の世界を、その短い生涯をかけて精一杯生きていきたいのだと考えるようになりました。

ちなみに英語では常同行動を「stereotypic behaviour」と表すそうです(リンク先の論文の解説はこちら)。

www.enrichment-jp.org

ではどうするか?

さて原因がわかったところで、どのような手を打つべきなのでしょうか?銀河鉄道999星野鉄郎や、あしたのジョー矢吹丈たちの言葉が参考になるのは間違い無いでしょう。短い人生を力一杯生き抜くために、時には危険なことに立ち向かいながらも困難にチャレンジして切り抜けるような生活を提供するのです。いわばスリル満点の人生というべきでしょうか?

そこでまずは散歩の回数と質を上げてみることにしました(笑)。散歩の回数が少ないとテンプルちゃんは次第に生活に飽きてくるのがわかります。そのタイミングで尻尾追いなどが始まるように思えます。そこで常同行動が始まる前に、短くてもよいから、刺激の多い街中散歩へ連れ出すことにしました。隣の犬に吠えられたり、塀から乗り出してベロを出して待っている仲のいいレトリーバーに挨拶したり、猫と火花を散らして「ガンのつけあい」をしたり、と様々な刺激を与えるのです。

夕方に犬連れ込みOKのお店に連れて行ってみる対策も考えています。ペット用クッキーが切れそうなので、本日は買い物をしにペットセンターへ行ってみようかと考えています。

それから、退屈してきたタイミングでボールキャッチ遊びを室内でやってみることにしました。あまり長時間はやらず、おもしろかった!と満足できる程度で止めてみて、どういう反応になるか観察してみようと思っています。(本日は庭の芝生でディスク投げを二十回ほどやりましたが、それはそれは見事なジャンプとキャッチでした。それから、近くの牧場に出かけ、木製ベンチを使ってアジリティを何度もやりました。)

ただ車でのお出かけでは、車内でせわしなくウロついてしまう傾向があるので、すこし気をつけながらやってみ流必要があります。

それから、テーマを決めて、街中のシンボル探しなどをやってみたら面白がるのではないかと考えています。これは先代犬のDDちゃんが好きだった「探検遊び」です。たとえば、私たちが住む街には議会で指定した綺麗な風景がいくつかあります。そこにいくと認定の記念碑が建っているのです。それを一緒に探し出しては写真に収めるという活動がDDちゃんは大好きでした。なにか面白いテーマが見つかったら、さっそくそれを実行してみたいと思います。

それでは、まずはペットセンターに車で買い物にいってまいります。果たして「命を目一杯感じて楽しむこと」ができるでしょうか?

 

 

子犬テンプルちゃんの超初期の問題(3) 落ち着けない、眠らない

サークルの中で大運動会

テンプルちゃんが、先代犬DDちゃんと決定的に違ったのは、その落ち着きの度合いです。テンプルちゃんは常にハイパー状態です。自分からクレートに入ることはまずありません。一度無理やり入れてみたら、箱を噛んで引っ掻いてと大暴れです。あまりにうるさいので、すぐに出してしまいました。それ以来クレートに入れるのは諦め気味でした。

テンプルちゃんは疲れ知らずで、常に動き回り、噛みまわり、そして吠え周ります。うとうとして眠ったのを見たことがありません。

私以外の家族から見捨てられたこともあり、テンプルちゃんは私に対する依存度が高く、少しでも姿が見えなくなると大変な声で鳴いたり、暴れたりします。こういうのを「分離不安障害」というのでしょうか? そんなとき、家族から「静かにさせろ!」と苦情が飛んできます(「最初にテンプルちゃんを見つけてきたのはあなたでしょ」と苦情も言いたくなります)。大変なストレスです。

先代のDDちゃんは、一人になってもマイペースでした。サークルから脱走の準備をするべくゴソゴソとやったりはしますが、そのうち疲れてスースー寝てしまいました。寂しくてキャンキャン鳴いたりすることもありませんでした。

分離障害なのか?

「個性の違い」という一言で片付けられるような違いなのか、それとも「分離不安障害」とか「多動症」といった精神疾患なのか、素人にはわかりません。一度、人間の病気で医者にかかったとき、専門外だとは思いましたが先生に聞いてみたことがあります。すると(人間の医者は)「人間の子供の多動症によく似ている症状だね」とコメントしました。もちろん「専門外ですから参考程度と思って」とも言われました。

獣医で精神科という方は日本に数える程しかいません。少なくとも、近所には住んでいませんし、また、そういう方がいたとしても、言葉ができない犬の精神をどれだけ正確に理解できるのか、私にはわかりません(つまりどれだけその獣医さんを信用できるのかわかりません)。そこで、人間の多動症の原因について色々と調べてみることにしました。すると、心配、不安、恐れなどが引き金になっている場合があることがわかりました。

また、犬の飼い方、といった題名の書籍を購入してみると「分離不安障害」についての説明が結構書いてあります。ネットで検索してもたくさんヒットします。子犬のときに、「かわいい、かわいい」ということで飼い主があまりにも子犬にベタベタしてしまうと、その後、少しでも飼い主から離れただけで飼い主を呼び寄せるように吠え始めるようになる、などと書いてあります。これも不安や心配が根っこにありそうです。

犬が多動症や分離不安障害に似たような症状が「発症」した場合、それは飼い主が「急な変化」を子犬に突きつけた場合にトラウマのような形で始まっていることが(次第に)見えてきました。つまり、一人でいても平気だったDDちゃんの場合は、(無意識のうちに)少しずつ一人の状態に慣れさせるような環境だったのでしょう。一方、テンプルちゃんは、急に長い間一人にさせられた経験があり、それがトラウマとなって問題が長引いてしまったのかもしれません。

子犬を分離不安障害にしないためには、少しずつ一人でいる時間を長くするトレーニングを行うのがよいようです。しかし、そんなことは知らずに日常生活を送ってしまうのが私たち素人です。病院に行ったり、買い物にいったりしなくてはならず、そのとき犬は急に一人にならざるを得ません。ただ、いきなり30分の留守番をさせるのではなく、1分、5分、10分と少しずつ慣らせていく必要があるのでしょう。しかし、素人の私たちは、いきなり60分とか留守番をさせてしまい、その後「分離不安」に似た症状を見せるようになったテンプルちゃんの問題行動に悩まされることになるのです。

夜のキャンキャン鳴きの問題

家族に嫌われてしまったテンプルちゃんは、家族の寝室から離れた部屋に一人で寝ることになっていました。すると、夜中にキャンキャン、ワンワン吠えました。大きな声で叱ると黙るのですが、しばらくすると同じ状態に戻ってしまいます。深夜も断続的に鳴き続けます。長いときは1時間近く鳴いていました。5分ほどは(多分疲れて)黙っているのですが、また吠え始めます。家族も私もうんざり。そして寝不足。毎日ひどい疲労に悩まされました。テンプルちゃんにしてみれば、不安と心配の極致だったことでしょう。

ほとほと困り果てた私たちは、ふたたび元警察犬訓練士のトレーナーに(お金を払って)相談することにしました。すると「一発でうまく行く」よい方法がある、と言います。さっそくその夜、その方法を試してみることにしました。

この方法は「天啓法」といいます。神話や物語などに、人間が悪事を行うと雷や地震など神の天罰が下る話がよくありますが、それによく似ています。聖書のモーゼのエジプト脱出では海底地震による海水面の異常低下とその後の大津波、ソドムとゴモラは火で焼かれたと言いますがおそらくは「大きな隕石」のようなもの、ノアの箱舟は大洪水、雷に打たれるのはフランケンシュタインだったでしょうか?

要は、鳴き始めるや否や、犬が驚くようなことを発生させて黙らせるのです。このとき、人間の存在を感づかれてはなりません。姿を隠し、気配を消して暗闇に潜み(あるいは離れた部屋に隠れ)、その瞬間を待ちます。そして犬が鳴き始めるや否や、バシッと驚くべき天罰を発生させるのです。花火のような音や、雷のような光、とにかく色々と考えて、犬が驚くようなことをやるのです(私たちは扉をバタンと閉めてみたり、火薬で大きな音がするおもちゃのピストルを利用したりしました。ただ、後者は市街地では誤解を避けるため使用しないほうがいいですね.....)。

最初に天啓法を試した時は、その威力に驚いてしまいました。沈黙し、朝までぐっすりです!しかし、ひと月もすると、また夜泣きが始まってしまいました。トレーナーに相談すると、繰り返し実施しないと定着しない犬もたまにはいる、といいました。少しがっかりしましたが、その晩再び天啓法を試しました。そしてまた静かになりました。

こんなことを1ヶ月おきくらいに繰り返しているうちに、テンプルちゃんの夜泣きは無くなっていきました。1歳を過ぎる頃には「皆無」となったと言えると思います。ただ、朝になってお腹が減ったりすると今でもなく場合があります。しかし、その鳴き方は執拗な長吠えではなく、無視していればすぐに鳴き止む程度です。

クレートトレーニングの必要性

分離不安障害は、頼りにしている飼い主がいなくなることに対する不安から発生します。そこで、「犬が一人でも安心して入れる場所を確保するように」と色々な本に書いてあります。それが「クレート」です。

しかし、テンプルちゃんはクレートに閉じ込められて嫌な経験をしたことがあります。また、分離不安もクレートに閉じ込められて発症したのではないかと疑う素地があります。実際に、教科書通りにクレートに入れてみたりもしましたが、噛んだり鳴いたりして激しく抵抗しました。スパルタ方式で無理にやるべきか、それとも「優しく」ゆっくりやるべきか、大変迷いましたが、両者ともにうまくいかない場合が多いらしいです。テンプルちゃんもダメでした(というより、トラウマになる可能性があるので前者は避けるべきだし、後者は舐められてしまい「負の教育効果」となる恐れがあるのでやはりやってはいけないようです)。

クレートは静かにしたり、お留守番のために必要なだけでなく、車での移動や災害時における飼育場所としても重要です。クレートトレーニングは飼い犬にとって必須なものであると、様々なブリーダーやトレーナーから注意されました。

嫌がるテンプルちゃんをどうやったらクレートに入れることができるのでしょう?先代犬のDDちゃんは、(何も教えてないのに)自分からドサっとクレートに入って、よくグウグウ居眠りをしておりました。テンプルちゃんには、あの状態が夢のまた夢のように思えます。

まず参考にしたのが、ローヤルカナンのHPです。

www.royalcanin.comこの文書を参考にして、まずはサークルの中にクレートを入れるだけにしてみました。入り口は開けたままにしておきます。最初の夜は、ガジガジと齧っておりました。テンプルちゃんの鋸歯にかかっては流石のアメリカ製クレートも崩壊寸前です.....。「だめ」と注意はしてみましたが、こちらの意識が途切れるとすぐにかじり出します。多少のダメージは諦め、できる限り噛みつきをやめさせながら、一晩、クレートと共に「暮らして」もらいました。朝になったら、クレートをサークルから取り出します(ストレスをかけすぎないため)。新品のクレートが、もはやボロボロ状態です。がっくり落胆しました。

次の日の晩も、同じようにクレートを入れるだけとしました。すると、さっそく変化が現れました。自分からクレートに入ってみたのです(初めて!)。とても嬉しかったです。ただ、数秒で出てきしまいました。放っておきましたが、再びクレートをかじり出しました。落胆...。注意してかじりをやめさせ、またかじられ、と前の晩の繰り返しです。ところが、大好きなカミカミおもちゃをクレートに放り込んだとき、劇的なことが起きました。クレートの中に入って、おもちゃを噛みながらくつろぎ始めたのです!

これがきっかけで、クレートに対する恐怖心が無くなったようでした。DDちゃんのように自分から入ることはありませんでしたが、夜になって「さあ、おやすみだよ」といってクレートの中に引き入れても、暴れたり吠えたりしなくなりました。そして、閉じ込められたクレートの中でスヤスヤと眠り出したのでした。

強制的に閉じ込めなくてはなりませんが、一旦クレートに入ると眠ることができるようになったのです。もちろん、すぐに寝るわけではなく、しばらくはガソゴソやって、あちこち噛んでから、知らないうちに寝ている、という感じです。

特に、扉を閉め、明かりを消して真っ暗にすると、クレートの中でも快適に眠ってくれるようになりました。

これで自動車での移動や、お客さんが来た時の犬の居場所の確保、さらには病院や買い物のときのお留守番など、様々な可能性が生まれたのです。本当に嬉しく思いました。

家の中で犬を飼っている人は、クレートトレーニングに対して負の感情を持つ人が多いと思います。つまり、「自由に行動させないとはけしからん。犬を閉じ込めて飼って、なんの意味があるのだ。家族のようにふれあいたいから飼っているのではないか?」という否定的な意見です。実は私の家族もこう言ってクレートトレーニングを否定しました。

困ってしまった私は、その頃、朝日新聞で連載記事になっていた、UG中目黒というドッグトレーニング店の高橋さんのブログに目が止まりました。「クレートトレーニングは必須」というその説明に感動し、それを家族に見せて納得してもらいました。

www.ugpet.com

クレートに自分からは入らないテンプルちゃん

先代犬のDDちゃんは、自分からクレートに潜り込んで、ぐっすり寝る習慣が自然とできました。ですから、クレートの蓋を閉めて閉じ込める必要はまったくありませんでした。好きな時に入って、好きな時に出ていました。

ところがテンプルちゃんは、自らクレートに入ることはまずしません。こちらで引っ張っていくか、餌で釣るかしないと入りません。入ったらすぐに蓋を閉めて閉じ込めます。さもないとすぐに脱走してしまいます。しかし、一度クレートに閉じ込められるとそれなりに眠ってくれます(深夜にキャンキャン鳴き出すまでは....)。

なんとか自分から入ってくれないものか、と悩んでいましたが、UG中目黒の店長に相談すると「1歳を超えたら自然に自分から入るようになるだろう」と言われ、少し安心しておりました。

ところが、1歳を超えてもまったく変化なしです。クレートには餌などでつられて入りますが、自分から入ることは全くありませんでした。天啓法の繰り返しにより、夜中の鳴き声は全くなくなりましたので、クレートの中に入ると、ある程度は「快適」に感じているようです。

クレートがダメでも、座布団だったり、犬用ソファだったり、そういった「お気に入りの場所」ができてくれたら安心なのですが、テンプルちゃんにはそういう場所はまったくありません。犬用ソファは食いちぎり、中のスポンジが出てきてしまうような状態。座布団は引っ掻いて引っ掻いて....その結果、座布団は引きずられて場所が移動し、部屋の隅に変な形で盛り上がっています....。

テンプルちゃんは眠るということに興味がないので、なにか遊ぶものを常に探し回っています。さもなくば、家や家具をかじったり引っ掻いたりします。家族は見張りのために緊張状態となり、ほとほと疲れて怒鳴り出したりします。

「やることがない」という状態は犬にとってはとても良くない状態だそうです。命令を聞いたり、一緒に遊んだりなど、人間と共同作業をすることに喜びを感じるようです。ですから、一人遊びというのも本来はよくないそうです(特にボーダーコリーは、人間と一緒に作業し、人間のために働くように選ばれた犬です)。人間が構ってやれない場合は、ぐっすり寝てもらう方が精神的にも肉体的にもよいらしく、ここでクレートが役に立つわけです。ですから、無理強いとは考えず、ボーダーコリーの生育のためと割り切ってクレートに入れるのがよいらしいのです。

ところが、先日、なんと初めて自分からクレートに入ったのです!生後1歳3ヶ月ほどでしょうか?しかし、入室時間はわずか10秒程度。その後、似たようなことを3回ほどやりましたが、いまのところDDちゃんのように自由に出入りするような状況にはなっていません。とにかく辛抱ですね。

 

 

 

子犬テンプルちゃんの超初期の問題(2) 社会化とワクチンの関係

対人関係、対犬関係、対車関係、対自転車関係などが苦手のテンプルちゃん

子犬時代の超初期において、テンプルちゃんは対人関係が苦手でした。可愛らしい笑顔で飼い主を見るとか、尻尾を振って首をかしげるとか、そういうほのぼのした出来事がありませんでした。気に入った人には、ミサイルジャンプで一直線に顔面めがけて飛びかかります...。気に入らない人には噛み付き、身をよじって本気で逃げようとします。程度というものを知らず、いつでも全力です。

それはそれで可愛いと思える人と、少しは人間の気持ちを汲め!と怒る人に分かれます。私の家族のほとんどが後者に属してしまい、テンプルちゃんの世話から足を洗ってしまいました。

これは多分、テンプルちゃんの「社会化」トレーニングが不足していたせいだと、今では考えています。そして、その問題はワクチンのタイミングと関係していると感じています。

子犬のワクチン

子犬は屋外の散歩に出かける前に「混合ワクチン」というものを3回接種します。様々な感染症に対抗するために母犬から母乳などを通じて受け継いだ自然な免疫は、生後2ヶ月ほどで消失すると色々な動物病院のHPなどに記述があります。

コロナワクチンと同じように、生まれて初めてのワクチンの場合、免疫が有効化されるまで複数回の接種が必要です。しかも、ワクチンは連続して打てませんから(二週間からひと月程度の間隔が必要)、ワクチンプログラムが完了するまでに、どうしても3,4ヶ月かかってしまいます。この間、散歩にいけないのが、子犬の社会化に大きな影響を与えます(動物病院のHPなどにも、そのような記述が目立ちます)。

一方、子犬として最後のワクチン接種となる狂犬病予防接種は、混合ワクチンが有効になってからです。混合ワクチンによる免疫が誘導された後なので、散歩に行けるようになってからのため、狂犬病予防接種は社会化とはあまり関係ありません。

必ずしも「散歩」に限らない社会化トレ

テンプルちゃんと私たちは、かかりつけの獣医さんのアドバイスに従い、ワクチンで免疫が誘導されるまでの間、テンプルちゃんを屋外に全く出しませんでした。これは大きな失敗だったと後悔しています。

3回目の混合ワクチン接種は生後4ヶ月程度のところで接種しますが、2回目の接種からおおよそ1ヶ月ほど間を開けないといけません。たとえば、獣医での予約の都合で予定が後ろにずれたり、ブリーダーが責任を持つ1回目接種のタイミングが悪かったりした場合、生後5ヶ月に近いところでの接種になる可能性があります。こうなると散歩に出るタイミングが大幅に遅れ、心の成長が固まる前に、家族以外の人間や犬たちに出会う機会が激減してしまいます。

さらに、3回目のワクチン接種後にすぐに散歩に出れるわけではなく、免疫が有効になるまで三週間程度、屋内で待機していなくてはなりません。つまり最悪の場合、生後半年ほど屋内に閉じ込められたままになってしまって、精神の発達、特に対人関係や対犬関係にに大きな問題が発生してしまう可能性があります(テンプルちゃんは、もしかするとこのケースかも)。

私たちの獣医さんは、「最近、この近所では子犬がパルボウイルス(糞便感染)やレプトスピラ(水たまりや池、川などの「汚染水」経由)に感染して死んでしまう事例が結構発生していて、心配している。社会化は大事だが、死んでしまってはもともこもない。リスクを承知で外に出すなら止めはしないが、免疫が有効になるまで屋内にとどまっていた方が安全」と主張していました。もちろん、専門家の意見でしたから最優先しました。

しかし、今振り返ると、獣医さんの半分(以上?)は、犬の生き死にや病気の有無だけに興味があって、精神的な発達やしつけにはあまり興味がない方が結構いるのではないか、と感じています。しかし、精神と肉体は表裏一体です。「肉体的な病気がなければ、精神的な病気は取るに足らない」と考えるのは間違いだと思います。

実際、社会化が重要と主張する獣医さんの多くが、「ワクチン有効化までの待ち時間では(犬が自分の足で歩く)散歩はできないが、飼い主が抱っこしたりキャリーに乗せたりして、外にであることは禁じていないので、積極的に外界へ出て様々なコミュニケーションをとるように」と言っています。

他の犬と物理的な接触があると(例えば、相手のお尻を舐めるとか、引っかかれるとか)、感染のリスクは確かにあります。しかし、抱っこしたまま遠目に挨拶したり、他の犬が鳴くのを見せたり聞かせたり、といったことをしても感染のリスクはありません。そもそも、知らない人に挨拶する程度ならば、ヒトイヌ感染はほとんどありませんから安全です。

性格も頭も良かった初代犬DDちゃんを育てたブリーダーに話を聞いた時、この方は、引渡し前の子犬たちを近所の小学校の校門までキャリーで連れて行き、小学生たちの遊び声を30分とか60分とかに渡って延々と聞かせるそうです。なるほど、そういう形の社会化もあるのか、と感心しました。

この話を聞いて色々とアイデアが湧いてきました。例えば、道路の近くまで連れて行って車の騒音を聞かせたり、ラッシュアワーで慌てる自転車や歩行者の様子を遠目に見せたり、駅前に連れて行って人々の往来を見せたり、ショッピングセンターの入り口に立ってお客さんの出入りを見せたり、などなど。色々な「ワクチン中の社会化」トレーニングのやり方を思いつきました。

テンプルちゃんに適用するには「時すでに遅し」でしたが、2歳までならなんとかなるという話を信じ、遅まきながら現在このやり方で社会化トレを行なっています。

しかし、できればブリーダーからおうちにやってきた時から、このような社会化トレを少しずつ積み重ねていくべきだったと反省しています。精神が固まる前にやると、驚くべき柔軟さをもって、高度な環境適応を実現してくれるのが子犬(人間の赤ちゃんもきっとそう)だと思います。

日本に数少ない「犬の精神科」を専門とする獣医さんの一人、ぎふ動物行動クリニックの院長さんは「できれば生後4から13週のところで社会化を完了してもらいたい」と言っています。これはブリーダーさんのところにいる期間を含みますから、なんともならないところもあるわけですが、13週付近ならなんとかなります。

平成28年動物愛護法が改正され、生後56日を経過しない子犬の販売や展示が禁止されました。これは、犬の世話などしたこともない悪徳商人たちが利益だけを考えて子犬を乱売したからです。56日というのは8週間ですから、社会化を実施すべきかなりの時間をブリーダーのところで子犬は過ごすことになります。したがって、自分で自分の子犬をしつけるためには、自分の家に連れ帰ったときから、すぐに社会化トレを始める必要があるということになります。

テンプルちゃんの「おそまき」社会化トレ

テンプルちゃんは、ワクチンプログラムの問題のみならず、コロナウイルス の関係で社会化が遅れてしまいました。散歩に出歩けるようになってからも、お店に出かけたり、人にあったりする機会が少なく、人間に対する興味のようなものが欠けた状態となってしまいました。

一方で、散歩にはよく出かけ、近所の犬たちとたくさん触れ合うことには成功しました。初期の頃は、大型犬や中型犬と仲良くなりましたが(ピレネー犬!)、途中から「小型犬キラー」となりました。これまで「大きな犬」と上手に触れ合えなかったプードルがテンプルちゃんと上手に遊ぶ様子を見て、感動してしまった飼い主の方々から感謝されたりするほどになりました。逆に、この頃からテンプルちゃんは大型犬が苦手となり、吠えたりするようになりました。その吠え方は人間に対する吠え方とよく似ていたので、大型の犬と人間を同類としてみているのではないかと疑っています。

また、狭い道路をものすごいスピードで走ってくる自転車や自動車に向かって、対抗心メラメラで飛びかかったり、吠えかかったりしていました。足の速いランナーやジョギングの人々の場合は、テンプルちゃんに突っ込んでくるように見えたり、退こうとしない素振りを見せたりすると、ものすごい剣幕で飛びつきました。あたかも「お前がどけ!」と叫んでいるようでした。

ショッピングモールの店舗出入口でも、くる人くる人に吠えかかり、飛びかかり、それはもう危険な状態といっても良いほどです。特に、小さな子供や小学生のような「不規則走り」や「叫び走り」に対して耐性が弱く、リードをものすごい勢いで引っ張って飛び掛かろうとします。

まずは、チョーク首輪というものに首輪を変えてみました。最初は使い方がわからず、強く首が締まって犬が死んでしまうのではないかと心配したほどです。あまり強く締まると苦しそうだし、行動に変化も見られないので、すぐに使うのをやめてしまいました。その間も対人行動は悪化するばかりです。

困り果てた末に、近くに住むトレーナーに相談してみることにしました。警察犬の元訓練士の方でした。住宅街の中なので、それほど広い感じではないのですが、ご自宅の庭を素晴らしいドッグランに改造していました。広過ぎず、狭過ぎずのちょうど良い広さです。

1回のセッション(1-2時間)で5000円程度ですが、色々と役に立つアドバイスをいただきました。まずはチョーク首輪に関しては「ハーフチョーク」というのを勧められました。チェーン構造の首輪で、犬が無理に引っ張ると首が締まる機能は同じですが、締まり過ぎないので怪我の心配が軽減されました。ただ、完全には締まらないので、犬がその弱点につけ込んで引っ張り続けることがあります(特に素人が使うとそうなる)。その場合は、人間がクイッとリードを引いて、瞬間だけ強く締まるようにするとよい、とトレーナーから教えてもらいました(お手本を見せてもらうとよくわかりますが、結構強く引きます。このとき、チェーンがギリッという音を出して締まるのがわかります)。

ちなみに購入したのは、トレーナーが使っているThe Blacklab companyのものにしました。

www.theblacklab.co.jp

このハーフチョークのおかげで、飛びつきや吠えかかりを抑制できるようになりました。後で知ったのですが、犬とのコミュニケーションに関しては、言葉による命令が確立する前は、リードの張りや引きで「会話」するのだそうです。チョンと引っ張ったり、ピーンと抑えたりして、「ダメ」とか「待て」という「言葉」として使うのです。

毎日の散歩で、この「リード会話」を繰り返していくうちに、少しずつテンプルちゃんの飛びかかりは減っていきました。しかし、それなりの時間はかかりました。場数を踏み、犬好きの子供たちに協力してもらい、リード会話を繰り返して、少しずつ理解してもらうのです。

プロのトレーナーは、餌(おやつやトリーツ)とリード会話を上手に組み合わせて、短時間で犬をしつけます。とくにリード会話の「引っ張り」はかなり強くやる場合があります。犬がひっくり返るような感じにやる人もいるほどです。しかし、素人はあれほど強くリードをひっぱれません。ただ、こういう技ができれば良いかというとそういうわけでもなく、トレーナーたちが言うには、「表面上はしつけられたように見えても、心の底から服従しているわけではないので、繰り返して焼き付ける必要がある」ということでした。つまり、どんなやり方でも時間はある程度かかってしまう、ということらしいのです。

歩いて散歩に行く時は、どんな歩行者が来るのか、どんな車両が走ってくるのか予想しながらになり、心臓はドキドキです。実は、犬の散歩に出てくる人たちのお顔をちらっと盗み見ると、私たちと同じように緊張していたり、怖い顔をしている人が多いことに気がつきました。やはり、犬が跳びかからないように緊張しているのだな、と思いました。仲間が増えたようで少し安心したのも確かですが、それだけ同じ悩みで困っている人は多いのだなと感じました。

子犬テンプルちゃんの超初期の問題(1) 排泄関係

テンプルちゃん(生後4ヶ月ごろ、2022年9月下旬)

落胆の子犬育て

生まれてから2ヶ月後に我が家にやってきたテンプルちゃんですが、正直「楽しい子育て」とはなりませんでした。元気すぎるテンプルちゃんは暴れるばかりで、聞き分けが悪く、こちらの意図を汲み取るということができません(初代のDDちゃんはこれが子犬の時からできたので、テンプルちゃんのいたずらぶりは衝撃でした)。

テンプルちゃんの子犬時代「超初期」における問題点について書いてみたいと思います。誰もが夢見る楽しい子犬との生活は、必ずしも期待通りにはいきません(少なくとも私たちの場合は)。きっと理想とのギャップで苦労している人は多くいるはずです。そんな人にこの記録が参考になってもらえれば幸いです。

まずは排泄関係の問題についてまとめてみます。

排泄関係の問題

色々ありましたが、今振り返ってみると幾つかのポイントにまとめられます。(1) 食糞(2) トイレシーツの食いちぎり(紙噛と命名)(3) 当てつけおもらし (4) 草や枝、ゴミなど食べた後の下痢 (5) 屋外で排泄できないこと、といった感じです。

1. 食糞の問題

子犬がどんなタイミングで大便をするのか掴むまでに数日から一週間ほどかかります。ぼーっとしていると、いつのまにウンチをして食べ散らかしていることがあり、掃除が大変でした。

懐の深い方なら耐えられるかもしれませんが、「早くきちんとした犬に躾けて、人間の家族同然の理想的な共生の暮らしをしよう」などと考えていると、なかなかこの「悪癖」が治らない場合、かなりのストレスになります。そして、この悪癖は(そのうち治るとはわかっていても)当事者とっては「永遠に治らない難題」のように見えてしまい、とても精神的に疲労します。

私たちが取った方法は、「四六時中見張る」でした。子犬の場合、深夜にウンチをすることもあるので、シベリアの森で焚き火が消えないようにして狼から身を守るように、「寝ずの番」をすることになりました。これは非常にきつい作業です。これをやると、子犬のことが憎らしくなること請け合いです。

この問題は、少しずつ、ゆっくりと無くなっていきました。消化器の成長とともにウンチの回数は少なくなり、タイミングも定期的になり、対処しやすくなります。記録を取り続けておけば、闇雲に「寝ずの番」をしなくとも何時頃にどのくらいのウンチをするか予想がつくようになるので、その時間に近づいたときだけ「寝ずの番」をすれば良いのです。短時間で済むのでストレスは減ります(なくなりはしませんが)。こんなことをやっているうちに、人間の生活リズムに合わせて(つまり起きているタイミングで)排泄をしてくれるようになり、そして回数も3、4回に減少していきます。

記録を見ると、1日に6回もやっていた頃がありました...。この時は、朝5時と朝6時半にやったとあります。寝坊すると食糞の後始末で大変な目にあいます。緊張していると眠りが浅くなって疲れが取れない日が続いてしまいます。

排泄の記録を必死に分析し、時間間隔が等間隔になったり、イレギュラーでも傾向が読み取れるようになったりして、「排泄予想理論」が完成していくにつれて子育てが多少は楽になった記憶があります。

食糞に関しては、野生動物や、猫、他の犬の糞を食べてしまう、というタイプもあります。こちらはジアルジアやコクシジウム、回虫といった寄生虫感染の問題と絡んでいるので、よりストレスがかかります。ただ、子犬「超初期」では、ワクチンの関係で、屋外に普通は出ませんので、この問題は発生しないはずです。テラちゃんも、しっかりワクチンが有効になるまで屋外に出ませんでしたので、この問題は超初期では発生していません。ただ、ワクチンのせいで社会化トレーニングが遅れると、しつけの観点から大きな問題が後々発生しますので、注意が必要です。これについては別の機会に書きたいと思います。

2. 排泄シーツ噛み(「紙噛」と命名

テンプルちゃんは、屋外で排泄しないようにブリーダーのところでしつけられていました。ベランダでもやりません。サークルの中の排泄シーツだけを目標にして排泄します。しかし、大抵の場合、シーツの「上」ではやってくれません。半分はずす程度なら「大喜び」するほど下手でして、大抵は「大外し」でした。

排泄スポットの面積の割合で、CC(センターサークル=シーツのど真ん中=大成功!)、TD(相撲の「徳俵」より=ギリギリシーツの上=成功)、QS(Quater spill = 25%シーツ外), HS(half spill=50%シーツ外), PF(Perfect failure = 100%失敗)などといった記号を編み出して記録し、一喜一憂しておりました。

しかし、テンプルちゃんは、このシーツが大嫌いなのか大好きなのかわかりませんが、暇さえあれば口に入れて噛みちぎる悪癖をもっておりました...。前もってあらかじめ敷いておくと噛みちぎってしまい、肝心な時に役立たず...ということが多々ありました。仕方ないので、排泄が間際に迫ったタイミングで、すっとセットするという「神業」が要求されたのです。もちろん、そんな神業、普通の人間にはできっこありません。早く置きすぎて破壊されるか、遅くなってしまい排泄に間に合わないかのどちらの場合がほとんどです。これも、ストレスがたまる出来事の一つでした。

そこで、なるべく早く屋外で排泄できるようにしつけようと思ったのですが、これもなかなかうまくいきませんでした。これに関しても後で書きたいと思います。

「神業」を会得するまでなんども失敗を繰り返しました。ものすごいイライラと怒りに支配される毎日でした。しかし、不思議なもので人間は「神業」がだんだんとできるようになるのです。時間が近づくと、ベランダに誘導し、あらかじめ置いておいたシーツの上に排泄できるようになってきました。風でシーツが飛ぶこともあったので、プラスチックの固定板をペットショップで買ってきて、その上にシーツを挟んで固定する方式も後で編み出しました。最終的にはこのやり方で落ち着き、私たちも神業の成功率が高くなりました。これは成長とともに排泄のタイミングが定期的になって予想しやすくなったこともあります。

あれから一年経った現在、使い残した排泄シーツが大量に残っています。あれほど脱却不可能に見えた排泄シーツからの卒業はいつの間にか起きていたのです。もちろん、それは屋外での排泄を身につけたときに始まったのですが、そこに至るまでには紆余曲折がありました。子犬「超初期」に身を置いていた頃は「夢のまた夢」のように感じられました。

3. あてつけお漏らし

おすわり、ふせ、まて、お手、など基本的な命令を教えようとしたり、排泄のやり方や、ご飯の食べ方など、子犬にはいろいろと教えたいことがあります。素直に学んで習得してくれればいいのですが、嫌なことはなかなかやってくれません。特に「ふせ」に関しては、その意味がわかっているように感じるのに、なかなかやってくれませんでした。

そこで、しつこく繰り返したり、強制してみたり、といろいろ試すわけですが、テンプルちゃんは嫌なことを強制すると、「あてつけお漏らし」をしました。おしっこのやり方はすでに覚えて上手にできるようになったのに、しつけの後に、PF(100%外し)をやったり、食糞を隠れてやったりしました。

この問題は結局自分たちでは解決できず、対立関係が続いた時期もあります。しかし、子犬に虐待に近いようなきつい罰を与えるのは絶対に避けなくてはなりません。子犬に不信感や恐怖心などといったトラウマを持たせてしまうと、後でしつけがやりにくくなり、大変になってしまうだけです。叩く、どなる、閉じ込める、強引に力ずくでやらせる、などもやってはならないと思います。

(1)餌を使って、損得勘定でしつけを行う...これはしつけの導入にすぎません。最終的にはこういう「わいろ」は無くさないといけませんので、何度も適用することはできません。犬を飼い始めた初心にしてみれば「じゃあ、どうすればいいの?」と難しく感じます。

(2)餌以外の損得勘定でしつけを行う...実は、「褒める」という行為自体もご褒美になるのだということを、英国のトレーナーのHPで知りました。最初は餌を使うが、すぐに「good boy!」と大げさに頭や耳、体をさすって褒める、というしつけ方法です。犬は餌も好きですが、褒められることも同じくらい大好きだということです(Royal CaninのHPにも書いてあった記憶があります)。このとき、少し甲高い声音で褒めるとよいようです。どうやら、犬は高い音の方がよく聞こえるらしいからです。

(3)あてつけお漏らしをしても無視 ......お漏らしをすると人間が大騒ぎ(声を上げて怒ったり、落胆の声を上げたり、大慌てで掃除を始めたり....)するのが面白くて犬は「あてつけ」をするようです。ですから、沈黙し、淡々と掃除や後始末をしてしまうと、犬は拍子抜けし、あてつけにこだわらなくなります。なかなか難しい技ですが、これも結構効果あります。

私たちは、これらの方法を完全にマスターしたとは言えませんが、真似事をやりながら、すこしずつ「あてつけお漏らし」の頻度を減らしたと思います。ただ、半年以上かかりましたので、私たちは非常に「消耗」しました....。

4. 草などを「拾い食い」した後の下痢

子犬はいろいろなものを拾い食いしてしまいます。草や枝を囓って飲み込んでしまうと、腸壁や胃壁が傷ついてしまい、消化機能が低下することがあります。特に、腸壁が痛むと水分や養分の吸収が弱くなり、食物をぎゅっと「絞る」ことなく、そのままスルスルと排泄段階まで流してしまうことになります(かかりつけの獣医さんから聞いた内容)。これが、いわゆる「下痢」です。

腸の細胞の代謝サイクルは1,2日ということですから、下痢が始まったら、腸壁が回復するまでの数日間(多くの場合は1日程度でよいらしいです)は「絶食」して腸壁を食物が擦って壊さないようにします。水は大丈夫です。

回復期になったら、柔らかくしたフードを少しずつ食べさせるなど、腸壁に食べ物が引っかかりにくいイメージで食事を再開します(たくさん食べさせると腸管が食物で詰まるイメージですから、そのようなやり方は最初避ける...といった具合)。

テンプルちゃんは、超初期には屋外に出ていなかったので、葉や枝の誤飲のようなものはありませんでしたが、絨毯やシーツを囓って飲み込んだり、手紙やティッシュペーパーを飲み込んでしまったり、といったことをやっていました。獣医さんには、のちに「葉っぱや枝は下痢の原因になる」と教わりましたが、今振り返ると、超初期の下痢は紙などを飲み込んだせいではないかと感じます。ただ、その時は「原因不明」でしたが(獣医さんも万能ではないようです)。

下痢をするたびに、ジアルジアを疑う、というのも精神的に疲れました。その度に下痢のサンプルを獣医さんにもって行って、スナップジアルジアや下痢パネルと呼ばれる総合検査を行いました。3、4回やりましたが、いつも「陰性」でその度に安堵の吐息が出ました。今考えると、屋外に行ってないのだから、ジアルジアなどに感染する可能性は少なかったのでした。

ただ、家のなかに侵入してきたゴキブリとか蜘蛛などを食べてしまった場合は、感染のリスクは多少出てきます。(テンプルちゃんは、ゴキブリ追いの癖、というか遊びをブリーダーのところで覚えてきたようで、今でも虫に飛びかかるような行動をボール追いなどの際に見ることがあります。)

5. 屋外での排泄

ワクチンが有効となり、いよいよ屋外に出る時がやってきました。テンプルちゃんは臆病でして、ベランダの階段を下り降りることができませんでした。管理する側からすれば、庭の芝生に逃げ出さないので楽といえば楽ですが、屋外での排泄を目指す上では、この臆病さは邪魔な性格でした。

階段を下り降りることができるようになっても、なかなか芝生で排泄することはできません。家の中でお漏らしをするたびに、飼い主のイライラメーターは最高値に振り切れました。

対策として最初に思いついたのは、排泄シーツを芝生に敷くというやり方です。これは一定の成功を収めました。なかなか排泄をやらずにためらっていても、排泄シーツを置いた瞬間におしっこやウンチをすることができたのです。これだと(HSやQSといった)シーツから漏れ出てしまう問題が発生してもイライラしません。少しずつ、面倒がかからなくなってきたのを実感しました。しかし、シーツ代が節約できないという問題はありますし、台風が近づいてきたりして強風が吹くとシーツが飛んでしまってイライラします。大雨の日も大変でした(基本的に水吸収シートなので、おしっこを吸う前に、雨で膨らんでしまうのです)。この期間は結構長く続きました。屋外なのに排泄シート...これでは最終的な解決になりません。

決定的な解決はお散歩でした。初めてのお散歩から2,3週後のことでした。田んぼの真ん中の農道でおしっこをしたのです。初めて敷地以外でおしっこをしました。京都などの観光地や東京の住宅街では、路上おしっこは推奨されません。むしろ屋内で排泄してから散歩に連れ出すように、といった指導をしています。しかし、犬の成長を考えると(特に大型や中型犬は)屋外での排泄も大事な活動の一つで、生活のリズムを築く上で重要です。テンプルちゃんは、この初めての屋外おしっこをきっかけに、排泄シートにこだわらなくなっていきます。もちろん、一気に解決したわけではなく、シートを見せて反応するということを繰り返しながら、次第にシートなしでもおしっこやウンチをしてしまう場合が増えて行ったのです。散歩でのおしっこも、その後なかなかできない期間が続いたりもしましたが、庭での排泄に慣れるにつれ、自然にできるようになりました。「きっかけ」があると、あとは相乗効果によって、どちらが先というわけではなく、自然に成長していくものらしいです。

ですから、飼い主の役割は「きっかけ」を与えることだと思いました。頭をひねり、様々なことを試して「きっかけ」を探すのです。きっかけがあると、子犬はそれをうまく利用して成長できるようです!

車での最後のお漏らしは、生後8、9ヶ月の頃だったと思います。犬は自分の生活範囲を綺麗にしたいという欲求があるらしく、成長するとお漏らしは自然と無くなっていきます。しかも、最終的には芝生の上でもやらなくなります。散歩やディスクで遊ぶ場所ですから、きれいにしておきたいのでしょう。1歳を超えた今では、庭の隅とか、散歩先の路上など、自分のテリトリーを汚さないようなところで排泄できるようになっています。

ボーダーコリーの2つの系統:ワーキング系とショー系

「2種類のボーダーコリー」?

「ボーダーコリーはボーダーコリーだから”1種類”に決まっている」という意見があるのはわかります。でも我が家にやってきた二匹目のボーダーコリー「テンプルちゃん」が、最初のボーダーコリー「DDちゃん」とあまりにも違っていたことから、その原因を調べていくうちに、「ボーダーコリーには”2種類ある”」という考えに到達したのです。それは、祖先の系統だったり、ブリーディングの方針の違いだったり、と様々な要因が重なった結果だと思います。

今回非常に参考になったのは、こちらのHPです。

pet-triangle.jp

上のwebsiteでは「ボーダーコリーの歴史は長くて短い」という表現で、私が考える「2種類の系統」という印象を説明しています。「短い」という意味は、家庭犬として独立した種類としての”ボーダーコリー”という概念が固まったのが、実はつい最近のことである、ということです。毛並みとか、形状とかによって種は分類されますが、ボーダーコリーの血統の開発に関しては、そういう「見栄え」はあまり重視されてこなかったということがあります。「歴史が長い」という意味は、牧場で羊を制御するための労働犬として、大昔から人間に利用されてきたという意味です。

つまり品評会で見栄えを競ったり、(雑種ではなく)独立した犬種らしさをどれだけ保有しているかという点において、ボーダーコリーの飼い主たちは長い間興味を持たなかったということです。彼らは、牧羊犬としての能力だけに興味があったので、性格や見栄えは(ある意味)どうでもよかったということなんでしょう。ボーダーコリーの見栄えを競うようになったのは20世紀後半以降らしく、品評会で優秀賞を狙う「ショー系」のボーダーコリーというものが現れました。

伝統的には、牧場でのすぐれた運動能力や羊を制御する高い知性を持ち合わせる血統を追い求める「ワーキング系」のボーダーコリーだけが求められてきましたから、見栄えで血統をつくる「ショー系」に対して牧場主たちは強く反対した時期もあったようです。今でも牧場で活躍するボーダーコリーはワーキング系の血統です(見栄えが良くても羊が追えなくては仕事になりませんね)。こうして、近年、ボーダーコリーのブリーディングの狙いが2つに分割したようなのです。

ボーダーコリーの「長い」歴史

ショー系としてのボーダーコリーではなく、ワーキング系としてのボーダーコリーの歴史を見てみたいと思います。どうしてボーダーコリーがあのような性質や能力をもつようになったのか合点が行く内容が、歴史には含まれています。

ボーダーコリーは、英国の北限「ボーダー地方」で開発された犬種と言われています。ボーダーというのは英語で「境界」という意味です。ここでいう境界とは、大雑把にいうとスコットランドイングランド間の「境」です。実際、この境界の上には「ヘイドリアンウォール」と呼ばれる万里の長城によくにた壁が作られました(現在は遺跡として残っています)。ただ、ヘイドリアンウォールを作ったのは古代ローマ人だったということですから、単純にスコットランドイングランドの国境というわけではないようです。いずれにせよ、ボーダーコリーが誕生したのはイングランドの北の方で、ボーダー地方と呼ばれるスコットランドとの境に近い場所だということです。

ボーダー地方は、概して、荒れた土地が広がり、気候も冷涼なことから、農耕よりも牧畜が発達したようです。そこで必要になったのが、優秀な牧羊犬でした。

現在「ボーダーコリー」として認められている犬種の祖先を辿ると、19世紀末のHemp(ヘンプ)という名前のボーダーコリーにつながるようです。

en.wikipedia.orgHempは「目力」の強いボーダーコリーとして有名です。それまでの牧羊犬は噛んだり、吠えたりなど物理的な手段で羊を制御しようとしていましたが、目力という精神的な圧力や威圧感によって羊を制御できた最初のボーダーコリーがHempだったということです。もちろん、運動能力も抜群だったそうです。多くの牧場主がHempの血統を取り込もうとした結果、現代のボーダーコリーの「祖」と言われるようになりました。

Hempが死んだ年にKep(ケップ)というボーダーコリーが生まれます。このボーダーコリーは「やさしさ」と「目力」という才能をもつ優秀な犬だったため、その遺伝子がたくさん残ることになりました。現在のボーダーコリーの血統にはKepの血筋もたくさん含まれているといいます。それまでのボーダーコリーの気性は荒く、強気のものが多かったといいますが、Kepのおかげで知性と性格の良さをボーダーコリーという犬種に入れ込むことができたようです。Kepは(イングランドから)オーストラリアに輸出されたので、オーストラリアやニュージランドから日本に輸入されたボーダーコリーの多くが、この気質を受け継いでいると思われます(私たちの先代犬のDDちゃんはこちらの系統だと思います)。

Kepの図:下のHP(borderwoodkennel.com)より転載

borderwoodkennel.com

最近の(日本の)ボーダーコリーの模様を見ると、顔の部分、特に目の間から鼻にかけて伸びる白い帯が目立ちますが、HempもKepも真っ黒い顔をしています。

顔の白い毛は、人間が犬の個体を識別するためにとても有用です。いわゆる「特徴」というものですね。この特徴はどうやらWinston Capという名前のボーダーコリーが持ち込んだ特徴のようです。この犬は「三毛」だったそうで、その珍しい遺伝子を多くのブリーダーが欲しがったようです。ただ、その結果、近い血統の組み合わせが多々発生し、ボーダーコリーに遺伝病が頻発する原因となってしまったとも言われます。

実は、テンプルちゃんの顔の白い帯状の毛の部分はかなり細く、黒犬の様相が強かったHempやKepにどちらかというと似ています。一方、DDちゃんは白い帯状の部分は太く明瞭で、Capに近い雰囲気でした。現代において、「家庭犬」としてボーダーコリーを求める人は、白い帯がはっきりしているタイプを好むので、ワーキング系よりもショー系のブリーディングで生まれたボーダーコリーを手に入れることになるでしょう。しかし、運動能力の点から、ワーキング系を混ぜるブリーダーもいます。もしかすると、売れ残った子犬の中には、黒が多いタイプがいて、その子の運動能力が高かったとすれば、牧羊犬として優秀だったHempやKepの血が強い子犬と言えるのかしれません。

ボーダーコリーを飼う理由

ボーダーコリーを飼う理由は人によって様々だとは思いますが、概ね2つに分類されるのではないでしょうか?

(1) 頭がいいから

(2) 運動神経がいいから

もちろん(1)+(2)という人もいるでしょうし、単純に白黒の毛皮が可愛いという人もいるでしょう(赤い毛並みやその他の色のボーダーコリーもいますが)。*1

頭がいいというのも、運動神経がいいというのも、もともとは「牧羊犬」として開発された犬種であることが大きな理由になっていると思います。(たとえば、下のyoutubeの動画はボーダーコリーのすごい運動能力と知性の高さを示してますね。)

youtube.com

HempやKepの遺伝子が残っているとはいえ、牧羊犬として優秀な犬だったことには変わりないので、大昔のボーダーコリーがもっていた「気が荒い」気質が残っている場合は多々存在するはずです。最近のショー系のブリーディングでは、見栄えを重要視しすぎるが故に、性格に関して「やさしさ」や「目力」を追求しない場合が増えているという話があります。そうすると、気性の荒いボーダーコリーが家庭にやってくることになり、飼育やしつけが難しくなる場合もあるそうです。

もしかすると、テンプルちゃんが噛み癖をもっているのも、昔の荒々しい性格をもった牧羊犬系/ワーキング系の血統が強く残っているせいかもしれません。しかし、KepやHempの血が残っているのも確実であるわけですから、うまくそちらの能力を引き出して、優しいけれども運動能力が高い「家庭犬」になる可能性を秘めていると信じて、日々頑張っております。

私はかつて英国の丘陵地帯に住んでいたことがあります。私の家の隣には牧場が広がり、そこには羊や牛と一緒にボーダコリー が暮らしていました。私は午後にFootpath(散歩用の公共の小径)を散歩する習慣がありまして、牧場の境の森や、丘に広がるトウモロコシ畑の脇をよく歩いていました。ある秋晴れの気持ちよい午後、陽の光が差し込む森のfootpathに一匹のボーダーコリーが立ち止まってこちらをじっと見ていました。私が前に進むと、彼女は距離をキープしたまま同調して先へ進みます(後で牧場主にこの話をしたら、彼のボーダーコリーはメスであることを教えてくれたのです)。その調子で歩き続けていくうちに、どうやらこの犬は私が森で迷わないように、私の自宅まで案内してくれているのではないかと思い始めました。夕日が地平線に沈み次第に暗くなり始めた頃に、私たち(ボーダーコリーと私)はようやく私の家の敷地の入り口までたどり着きましたが、そうすると、このボーダーコリーは満足そうに踵を返して自分の牧舎の方へ走り去っていったのでした。

それ以来、私が散歩するたびにこのボーダーコリーはどこからともなく現れて「道案内」をしてくれるようになりました。時には私を途中で放ったらかしてトウモロコシ畑の中に飛び込んでいなくなったと思ったら、三十分後にふとまた現れて家まで見送ってくれたりしました。きっと楽しい場所が他にあって、そこで遊んでから迎えにきてくれたのでしょう(加えて「この辺りはもう慣れただろう」ということだったのかも)。

とにかく、この頭の良さ、森の中を疾走するその運動能力の高さに、私は惚れ込んでしまいました。この経験がもとになり、ボーダーコリーを飼うことに決めたのでした。ただ、英国では色々な事情があって犬は飼えませんでしたので、帰国してから購入することにしました。それがオーストラリアから借りてきたボーダーコリーを母親に持つDDちゃんでした。

DDちゃんは、英国で出会ったあのボーダーコリーを彷彿させる知性をもっていました。ただ、運動能力や体格は残念ながら、あのボーダーコリーほどではありませんでした。

一方、一昨年DDちゃんが天国に旅立ってから半年後に飼い始めた(今の)テンプルちゃんは、「ショー系」の血統だと説明を受けて購入しましたが、成長するにつれて、その運動能力が驚異的であることに気づきました。知性も高いと思いますが、それが故にしつけがとても難しかったのです。先代のボーダーコリーDDちゃんの飼育歴が10年を超えていたとはいえ、DDちゃんがお利口で穏やかな性質だったおかげで、私たちは犬のしつけについて「素人」状態のままだったのでした。2代目のテンプルちゃんのしつけがうまくいかず、私たちはとても苦労しております。最初はそれをすべて「ショー系」といいながら、「ワーキング系」の血統が色濃く残った個体を売りつけた(と思い込んだ)ブリーダーのせいだと疑っていましたが、よくよく調べれば、今の日本はどちらもごちゃ混ぜになってしまって、どちらだからどうのこうの、ということにはなっていないようです。とにかく、私たちのしつけが間違っていた、それに尽きるようです.....。

*1:ちなみに、以前、小さな子供に「あっ、パンダ」と指さされたこともあり、この子は「この犬、かわいい」とつぶやいてました。

テンプルちゃん来たる

長い迷い道を抜けた後、ようやくテンプルちゃんにたどり着きました。

懸案だった遺伝病についての検査はすべてクリア(CEA、つまりコリーアイと呼ばれる目の遺伝病に関してはキャリアで、それ以外はすべてノーマル)でした。また、下痢を引き起こすジアルジアに関しては、「スナップジアルジア」という抗原検査で陰性でしたし、回虫やコクシジウムなどの検査も陰性でした。つまり、完全な「健康優良児」というわけです。

しかし、テンプルちゃんには一つ大きな問題がありました。そして、それはブリーダーの飼育方法、および教育方法に問題があって、それが出発点になっているらしいことが後で判明しました。それは「噛み癖」です。

最初は、甘噛みのひどいもの、程度に考えていたのですが、成長するにつれ、その噛む強さは大変なものになりました。これはおそらく「小心者」という生まれついての性質によるものと、負のフィードバックという間違った躾けが原因だと思われます。

性格の乱暴さ、凶暴さは、前に飼っていたボーダーコリーとはまったく違うもので、ある意味衝撃的でした。家族の中には「この犬は嫌い」といって近寄らなくなってしまったものもいます。

これからは、現在進行形の「テンプルちゃんのしつけ」の成功失敗について書いていこうと思います。(最初にこのhatenaブログを書き出してから一年以上のブランクがあったのは、テンプルちゃんのしつけに手を焼いていたからです。最近、ようやく希望の灯が水平線の彼方に見えてきたような感じになり、ブログを書く余裕がちょっとだけでてきたのです。)